TOYOTA YUI Project

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クルマは人が作っている。
そんなあたりまえなこと

デザインリーダー

武井 達弥

武井 達弥

そんなニセモノみたいなクルマを作るな

私はトヨタに入ってからずっと、ショーカーを作るような部門や、実際の量産車になる前の先行開発のデザインをやっています。未来のモビリティのデザインスタディです。自分の中ではどんな仕事が来ても、比較的に、それなりのアウトプットは出せるなという自信がありました。でも今回のLQのプロジェクトは、ちょっと難しいよと上の人にも言われていて。LQは人工知能エージェントを積んだりとか、自動運転を搭載したりとか、カタチ以前に成り立せなきゃいけないファクターがたくさんあった。それらを踏まえてのデザインですので、相当難しかったです。デザイン担当役員の福市に見せた時に「そんなにニセモノみたいなクルマを作るんじゃない」と言われたり。福市がそういう風に言ってくれたことで、我々デザインの担当者としては奮起しました。周りの部署に対しても、妥協したものは絶対に見せたくないという気持ちになりましたね。

内装と外装の垣根をなくす

クルマのデザインは、普通は外形と内装というふうに分かれるのが一般的。でもLQには、YUIがクルマを縦横無尽に動けるように内装と外装の垣根をなくそうというコンセプトがありました。キーワードはInside Out。外も中も、全てを考えてデザインをしていく。例えば外形のフォルムがドアのガラス面から、そのまま室内にまで貫通してインパネのところまで突き抜けていたりします。AIとか自動運転とかって言うと機械的な冷たさみたいなところが前に出てしまいがちです。でもトヨタが考える愛車、未来の愛車として、どんなに先端技術を搭載していても、人の手の作る温かみを失わないように作りたいっていうのが開発者の想いだった。Inside Outの考え方によって、そうした部分もカバーできて、かつ他車にはないフォルムが生まれました。

用いたのはミニカーの理論

ショーカーは比較的自由に作るので、車高も低くできますし、大きなタイヤも履いてる。全幅も広い。っていうあまり制約がないのに対して、量産型は、パッケージが決まってくるので制約を受けやすい。スープラの時もそうだったんですけど、今回は、ギュッとコンパクトなパッケージの中に落とし込む難しさがあった。で、一番初めに考えたのは、ミニカーでよくやるデフォルメです。フルサイズのデータをそのままギュってそのまま縮小して作ると同じに見えない。なので必ずミニカーとかプラモデルっていうのは小さくした時にその車に見えるようにちょっとデフォルメしてあるんです。逆に言うと小さなクルマで丁度いいぐらいにしたやつをそのまま大きくするとちょっと過剰になるんです。我々はクルマの造形を、1/10とか1/5とかのスケールでフルサイズに入る前にやってから、フルサイズに拡大したりします。ただ1/10か1/5ぐらいで作ったスケールモデルをスキャンして測定し、そのまま加工するとオーバーデザインになることがあるんです。今回は、ショーカーのパッケージに対してどうしても幅も狭くなる、全長も少し短くなる、タイヤも当然少し小さくなる、全高は高くなる。って不利なところがある。そこでデフォルメを少しいれようっていうのを考えてました。なので、ショーカーよりも少し誇張して、例えば回るインサイドウィンドウとかもショーカー以上に強調することによって、スケールが小さくなってもショーカーの迫力を失わないようにしています。

あのクルマはお父さんが作ったんだよって

クルマの開発にはものすごく多くの人が携わります。大勢の開発者が、何日も何ヶ月も考え抜いてクルマを作り上げていく。そういう開発者の方々の努力を無にしてしまうのも、努力を実らせられるのも、我々デザイナーだと最近思うんです。クルマが完成した時に、その開発に携わった人たちが、あのクルマは俺がやったんだぜ、あのクルマのあの部分はお父さんが作ったんだよ、と家族に言えるかどうか。そのために、我々デザイナーの責任は大きい。開発者の努力を無にしないように、最高のデザインにしなくちゃいけない。我々は、もちろんお客様のためにクルマを作っていますけど、やっぱりその前に開発者一人一人が自信を持って、あれは自分がやったんだよって言えるクルマを作る。それが大事だと思っています。

最後はやっぱり全員の情熱でしかない

デザイナーがもうこれでいいやと思ってしまったら、それ以上のクルマには絶対ならない。だから高いレベルにまでデザインを持っていくためには、デザイナーの情熱が必要不可欠です。ただデザイナーがどれほど情熱を持っていても、設計者が、仕事だからと割り切って冷めていると結局噛み合わない。LQのプロジェクトでは、設計側とデザイン側がしっかり噛み合いました。おそらく初めは「何言ってんだこいつ」くらいに思われていたと思うし、言い争いもありましたけど、ダメ元で言ったこと、言われたことも実現できていたりします。やればできるんだというのを実感できた。設計とデザインだけではなく、工場も含めて、全員が絶対に絶対に良いクルマにするんだという想いで、一つのチームになっていました。それはもう、素晴らしい体験でした。