TOYOTA YUI Project

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開発ストーリー

近い将来、
クルマは「愛」を実装する。

LQ 開発責任者

井戸 大介

次の時代の愛車をつくれ、という豊田章男のミッション

実は、愛車という言葉は、トヨタ自動車が長い間、大事にしてきたものなんです。だからトヨタ自動車が未来のクルマを考える時に、愛車をコンセプトに置くのは、特段不思議なことではないと思っています。私自身ももちろんクルマが好きなので、自分の体験に照らし合わせて愛車というものをずっと考えていて。今回LQで表現したそのひとつの答えが、乗る人の体験とか経験を拡張してくれるのが愛車なのではないか、と言うもの。クルマがあったからこういうことができたねとか、この人に会えたねとか、行けない所に行けたねっていうことが、いつか振り返った時に、一番大きなものになってるんじゃないかと思うんです。ですので、新しい技術で、お客様の体験や経験をもう1回拡張しようというLQとYUIが目指した考え方は、とても好きな部分です。

日本人の感性でつくったAIエージェント

ドライバーのパートナーになるというYUIの考え方自体が、すごく日本的ですよね。日本のトヨタ自動車が提案する AIエージェントだからこそ、パートナーという役割を目指しているのかもしれません。最後にはみんな仲良くなれるよねって信じてる、そんな日本人の良さが根底にあります。もちろん南北問題とか宗教問題とか色々、世界にはたくさんの課題があるんですけど。それでも「仲良くしようよ」と無邪気に言ってしまえる民族性が、日本人にはあるように思います。そういう意味で、AIエージェントはもちろん無機的な機能の一つではあるんですけど、でもそれがある一つのパーソナリティとして人間と関係性を結べるのだと認知された時に、ちょっとだけ世界が変わるかもしれないと思っています。

クルマという特殊な空間だからこそYUIが必要になる

クルマには、程良い閉空間という特徴があります。そこでは普段話さない人とでも話せたり、話しにくいことでも話しやすかったりする。相手がAIエージェントであっても、同じことが起こります。YUIとの会話の内容や話し方などから、ドライバーの、何が好きで何が嫌いかといったパーソナリティがだんだんわかってくる。何が好きで何が嫌いかがわかったら、それにどう反応するかという話になる。クルマの中は姿勢や視点が比較的限定されているので、HMIも設計しやすい。YUIはドライバーを理解した上で、YUIの方からインタラクションを取って来るんですね。このYUIの方からっていうのがポイントなんです。

永遠と一瞬

冒頭に経験、体験を拡張する話をしましたが、自問していたことがあります。「もの」から「こと」の時代になって、「愛車」は「もの」のままでいいのか。「次の時代の愛車をつくれ」という社長からの問いに答えていないのではないか、ということです。2018年1月に、トヨタはモビリティカンパニーになると宣言しました。クルマを「所有する」から「使う」ことになっても、「愛車」という考え方は残るでしょうか。それとも「所有する」クルマだけに通用するニッチな概念になってしまうのでしょうか。
「永遠と一日」という映画があります。主人公の詩人が、最後のシーンで、おおよそ自分の死に際して、最愛の妻に尋ねます。「明日の長さは?」。妻は答えます。「永遠と一日」。以前、仕事で写真家の上田義彦さんの撮影に立ち会ったことがあります。きれいな海辺で、三脚に載ったカメラを覗かせていただきました。当時、写真について全く無知でしたが、衝撃を受けました。きれいな海辺にいるにもかかわらず、ファインダーから見えたのは、沖に漂っている一艘の小舟だったのです。
「思い出」というのは、このようなものだろうな、と感じました。多分、覚えているのは、ほんの一瞬のシーンです。それでも、人は一生その「思い出」と共に生きていけます。その人にとっては、永遠です。「愛車」という概念も、「思い出」が積み重なったものなのでは?だとすれば、その「思い出」のワンシーンに、クルマがあることが大切なのでは… 「愛車」という概念が「所有する」クルマから解放される可能性を感じました。実はこのことをプレゼン資料の末尾にこそっと入れておきました。

愛の長さ
ひとりのとき、ふと誰かとこの瞬間を共有したいと思ったことはありませんか
大切なひとといるとき、この瞬間を共有できてよかったと思ったことはありませんか
かけがえのない、その瞬間を、一生忘れない
永遠と一瞬

愛(AI)の長さ
ひとりのとき、ふと誰かとこの瞬間を共有したいと思ったことはありませんか
これからはYUIがいます
大切なひとといるとき、この瞬間を共有できてよかったと思ったことはありませんか
YUIはそっと見守り、そのときを記憶します
かけがえのない、その瞬間を、一生忘れない
もし、そこにクルマがあったら、
クルマも大切な思い出の一部として、忘れないでいてくれるかな
永遠と一瞬

LQで仕事をご一緒しているクリエイティブディレクターの松岡さんが、これを見つけて綺麗な映像にしてくださいました。そして、この映像を開発関係者に見てもらったときに、ひとりの海外エンジニアのつぶやきが聞こえました。「YUIでやりたいことが分かった」。
永遠と一瞬。これは、「次の時代の愛車をつくれ」という問いに対する答えであると同時に、プロジェクトを前に進めるきっかけになった、大切な言葉になりました。試乗体験に来て下さるお客様に、LQに携わったエンジニアや関係者に、そしてその周りにいる大切な方々に、かけがえのない一瞬が、きっとあるはず、と信じています。